『セックスドキュメント・性倒錯の世界』『エロスの女王』

ドキュメントと言っても真面目な記録映画ではない。ナレーターが西村晃と金子信夫でまじめに語っているが、見世物の羅列である。
だが、メリエスから『世界残酷物語』まで、見世物は映画の本質の一つである。
1971年10月と1973年2月に公開されている。
中では、銀座ローズという日本で最初に性転換して男から女性になったというダンサーの話がすごい。
彼は、ダンサーとしてキャバレーで踊っているが、彼には妹がいて、旭川に住んでいるが、なんと彼女は女性と同居しているのである。
彼らの父は中国にいて、戦後引き上げてきて旭川で死んだとのことで、ローズは夫の車で旭川に行き、父の墓前で踊る。
この辺は、荒木一郎の音楽が非常に抒情的であり、美しい。

サド・マゾ、同性愛の議論には、戸川昌子、団鬼六、そして若き日の渡辺淳一らのインタビューが挿入され、藤田まことのようなニヤケた二枚目は誰かと思うと渡辺大先生だった。
その他に、フランス帰りの演技を見せようと工夫を凝らす熊本在住の中年夫妻の日常も面白い。
鞭打ちと緊縛で、大阪のダイコー劇場で見せるのは、陵辱ショーであるが、この頃こうしたショーが、当時は公然、非公然ともに沢山あったことが分かる。
『エロスの女王』で、一番面白いのは、火石(ひいし)プロダクションの新春ヌード撮影会で、100人位の女性が裸になって、ホテルの会場で男たちのカメラの前に立つ。
火石プロは、1970年代、ピンク映画等にヌード女性を供給した芸能プロで、東北出身の無骨で不細工な火石氏の自身に満ちた姿が迫力がある。
横浜でも有名だったデラックス東寺の「空中回転ナマイタ・ショー」も出てくる。
前衛ストリップと称されたものも、新宿のモダンアートをはじめ、この頃は結構あったものだが、今やこれも絶滅危惧種、というよりも絶滅したと思う。
中島貞夫特集、新文芸坐

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 松木完之 より:

    懐かしい
    デラックス東寺の前は毎日のように通ってたのですが、
    中に入ったことはないですね。
    華やかなりし頃は客で溢れていたらしいですけど、
    今は寂れていますよね。