ネットで注文しておいた中古ビデオが年末に来たので、1月1日に見る。昭和38年黒澤プロ・東宝制作、黒澤明作品では、最後の傑作。この後、異常な『赤ひげ』を作った後、完全に黒澤は駄目になる。
脚本がすごい。黒澤明、小国英雄、久板栄次郎、菊島隆三の4人。
犯人役の山崎務が強烈な印象を与えたことで有名だが、三船敏郎もすごい。豪胆に見えて実は小心という役は、三船の実像に近く適役。
ロケーションとスタジオ、さらに屋外にセットを建てたスタジオ・セットとの切り替えが最高。終盤近く山崎が三船にタバコの火を借りる横浜伊勢佐木町のシーンなどは、ビデオで見ると本当に横浜でのロケーションのように見える(実際は、東宝スタジオの野外に建てられたセット)。
横浜の黄金町や麻薬のやり取りをする無国籍酒場(これは実際にあった根岸屋をモデルにしている。実写は藤田敏八の『新宿アウトローぶっとばせ』に出てくる)も勿論セット。
脇役も実に贅沢。
東野英次郎、沢村いき雄、藤原鎌足らがワン・シーンのみの出演。
記者会見のシーンにも大滝秀治、守田比呂也らの多数の新劇役者が出ているが、台詞があるのは北村和夫、千秋実、三井弘次のみ。
黄金町の麻薬街の女が菅井きんだが、制作の田中友幸の奥さんである。
魚市場の人間の役で清村耕治が出ているが、声は熊倉一男に替えられている。これは、清村が自殺したためだが、同時録音ではなかっただろう。
いずれにしても、当時の東宝映画の力の大きさを再認識させられるすごい作品である。
こういう映画を見ると、最近のへなちょこ映画を見るのが嫌になる。
コメント
菅井きんについて。
田中友幸の奥さんは、たしか去年死んだ中北千枝子だったと思いますが。菅井きんの旦那さんは新劇関係のプロデューサーで、もう故人です。菅井きんは、拙宅のわりと近所に住んでおります。さすが女優で、素顔はキリッとして、普通のお婆さんではありません。
そうでした。
確かに菅井きんの旦那は、俳優座映画放送のプロデューサーだった佐藤正之でした。
東宝には、もう一人佐藤一郎というプロデューサーもいましたね。