文学座の代表だった加藤武が亡くなった、86歳。
彼は、言うまでもなく多数の演劇、映画に出ているが、何といってもあの怖い悪役顔が素晴らしい。
黒澤明の映画では、『悪い奴ほどよく眠る』の三船敏郎の友人役が非常によく、彼の性格が一番出ているような気がする。
よく悪そうな顔をしている人間は、本当は悪人ではないというが、この作品での加藤武は、そのものだったと思う。
孤独な三船敏郎の唯一の友人で、彼の復讐劇を助けてくれるのである。
この映画は、非常に不思議な映画で、汚職と言う社会派的作品だが、一切資料調査した形跡がない映画である。
その理由は、今月には出る拙書『小津安二郎の悔恨』の附章として書きましたので、読んでください。
彼は、今村昌平の作品にも出ていて、中では『豚と軍艦』がよく、日活では石原裕次郎と共演した舛田利雄監督の、神戸を舞台にした『男と男の生きる町』が最高だったと思う。
彼は、実家が築地の魚河岸の仲買人、有楽町の泰明小学校の卒業生で、本当の江戸っ子だったと思う。
ご冥福をお祈りしたい。