1974年、まだベトナム戦争の帰趨が決まっていない時に公開されたドキュメンタリー映画で、非常に精緻にできている。
戦後の、フランスとの独立戦争から始まり、ベトナム戦争の実態を鋭く描いている。ただ、決して一方的に告発するものではなく、アメリカ、フランス、ベトナムなど政府側政治家の意見もきちんと出てくる。
さらにベトナムで実際に戦った兵士たちの証言がほとんどで、映画に真実性を与えている。彼らは、一様に戦争の意味も意義もろくに知らずにベトナムに送られ、戦闘で狂喜し、興奮したりもする。
実際に高速戦闘機で敵を銃撃するのは、性的とも言えるような恍惚感があるようだ。
だが、次第に一方的な勝利ではなくなり、本当の戦闘で彼らは心身共に傷ついて行く。
アメリカ国内で高まる反戦運動。ついにはジョンソン大統領が米軍の撤退とベトナム化に踏み切らざるを得なくなる。
司令官だったウエストモーランドは、後ろから撃たれたと精一杯の不満をぶちまけるが、時すでに遅しだった。
最後の、米国内のヴィクトリー行進には驚く。この期に及んでも、偉大なアメリカの敗北を認めない連中はいたのである。
アメリカの凄いところは、どのような時でも、全体にはなびかず少数の意見を持つ者がいるところだろう。
まさに多様性の中の統合なのである。
シネマジャック