家城巳代治を知っていますか

川崎市民ミュージアムの「独立プロダクションの映画作家たち」で、家城巳代治の作品を4本見た。
この人は、左翼的監督で、代表作は三国連太郎と田中絹代主演の『異母兄弟』だろうが、今回『ともしび』『姉妹』『みんなわが子』『ひとりっ子』を見て、この人はむしろお涙頂戴松竹メロドラマの作家だと思った。

他に、有名なので特攻隊を描いた『雲ながるる果てに』にがあり、これは左翼・家城と右翼・鶴田浩二が一緒にやった奇妙なもので、美空ひばりの『悲しき口笛』もレッド・パージで松竹を追われる直前の作品。

『ともしび』は、田舎の良心的教師・内藤武敏が保守的な村から追われるもの。『姉妹』は、野添ひとみと中原ひとみが姉妹の「ダブル・ひとみ映画」。
『みんなわが子』は、東京目黒の小学生が地方に学童疎開する話、『ひとりっ子』は家の貧しさから防衛大学を受験した主人公が自衛隊と社会に目覚め防大進学をやめる話である。

最後の共産党プロパガンダの『ひとりっ子』は論外で、『みんなわが子』が一番素直で良かった。『姉妹』のラストで野添が結婚して花嫁姿のところの叙情性も、全く松竹大船的。
左翼作家と言われたが、本質はメロドラマ作家だったと思う。それは、彼を貶めているのではない。立派な叙情性のある作家だったと言うことである。

かの2チャンネルでは原田美枝子がデビューした(勿論裸もあるそうだ)『恋は緑の風の中』の監督として有名である。

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コメント

  1. こばやし あさひ より:

    共産党的映画について
    『ひとりっ子』もそうだが,この頃随分ありましたね。『若者が行く』とか『君が若者なら』など。結構当ったんじゃなかったかな。
    テアトル新宿で見たとき,たしか満員だった。

  2. 一種の便乗企画でしょう
    この映画の元は、言うまでもなくフジ・テレビのドラマ『若者たち』。主題歌も同名の曲。テレビが打ち切られた後、新星映画社・俳優座で映画化され『若者たち』『続・若者たち 若者はゆく』『若者の旗』と3本作られた。監督はテレビと同じ森川時久。これが比較的当たったので、文学座に声をかけて『ひとりっ子』を作ったのではないかと思う。
    同系列の作品に深作欣二が監督した『君が若者なら』もあり、これも新星映画社と文学座で、松竹で公開されたようだ。
    昔付き合っていた子が山本圭のファンでした。田中邦衛らの兄弟がやたら議論をする劇で、そのダサさには参りましたね。