ボクサーのモハメッド・アリが亡くなった、74歳。彼はボクシングの重量級の歴史を変えた人間である。
彼以前のヘビー級などの重量級は、重い動きの鈍い大男が、足を止めて殴り合うというもので、フレッド・ヨハンソンやソニー・リストンなどみなそうだった。
古くは、ジャック・デンプシーなどもそうだったようだ。
それを革命的に変えたのがアリだったが、彼は元はライトヘビー級の選手であり、五輪もライトヘビーの金メダルである。
そして、1984年コンゴのキンシャサでチャンピオンを奪回したタイトルマッチは、キンシャサの奇跡と呼ばれたが、実はそれには前夜に音楽イベントがあった。
ジェームス・ブラウン以下、ファニア・オールスターズなどの全アメリカの黒人音楽の総結集のような大イベントだったのである。
また、これは当時のアフリカのポピュラー音楽にも大きな影響があったともいわれている。
アリは、一度だけ日本で正式なボクシングの試合をやったことがある。
このとき、テレビの中継の解説は、フライ級の元世界チャンピオンの海老原博幸だったが、彼は、来日からの姿を見てアリのことを、
「アリはボクサーではなく、しゃべり屋だ」と言い、「あれじゃ戦う前に疲れてしまうだろう」と言っていた。
その通り彼はしゃべりすぎて疲れたのか、格下の相手をKOすることができず、平凡な判定勝ちに終わった。
アメリカと世界の歴史を変えたボクサーの冥福を祈りたい。