先週の日本映画学会ではいろいろと興味深い発表が行われたが、その中で一番だったのが、伊藤弘了君の『早春』のネガシートからの考察と、高木創さんの「トーキー初期ニュース映画の音響技法」だった。
伊藤弘了君の発表について、私の考えを送ったところ、彼から返事がきて、公開して良いとのこともいただいたので、以下に付ける。
指田文夫さま
お世話になっております。ブログに掲載されたご感想の件、お知らせくださってありがとうございます。さっそく拝読させていただきました。
彼の発表については、本ブログの6月20日に書いたので、ご覧いただきたい。
さて、彼と並んで、非常に面白かったのは、東京テレビセンターの高木創さんの「トーキー初期ニュース映画の音響技法」だった。これは、松崎新一さんという、1916年生まれで今年100歳の元音響技師の方へのヒアリングを基にしたものだった。
松崎さんは、1936年に映音に入社し、その後KSトーキー、さらに同盟通信映画部、さらに日本ニュース映画社でニュース映画の録音に従事されてきた方で、戦後はTBSで活躍されたとのこと。
そもそも、映音というのは、日本で最初にフィルム式トーキーを実用化した「ミナトーキー」の流れを継ぐ会社で、京都ではマキノと協力して京都映音を作るが、ここに松崎氏は入社したのである。
そして、1937年の日中戦争開始以後は、ニュース映画の「黄金時代」で、日本ニュースが人気を得るようになる。
その中で、音響技師として松崎新一さんは、ドイツ映画の銃声等の音を複製してニュースの場面に使用していたというのだ。
今では多数の音が、ライブラリーとして各社に保存され使用されているが、昔は違ったのだ。
実際に、習志野演習場などで実弾の音も録音したが、ドイツ映画の音には敵わなかったとのこと。
両方の音の比較もされたが、確かにドイツ映画の音の方が、低く迫力がはるかにあった。
その理由は、懇親会で高木さんにお聞きすると、「やはりドイツ人の真面目さではないか」とのこと。
使用機器も優れていたのだろうと思うが。
さらに、戦時中にNHKの放送で、山田耕筰が、オペラで歌手と各楽器を同心円状に配置して音響効果を構築していたことも報告されたが、やはり、山田耕筰はすごいと思った。