『剣・縄張(しま)』 加藤泰

青柳信郎のテレビ映画会社のC.A.Lの製作で、読売テレビで放映されたもので、東映京都で撮影されたようだ。

               

江戸で、女の魚屋・河村有紀が一人で暮らしている。

周囲からは、1年前に行方知れずになってしまった風来坊亭主の緒形拳のことなど、もう諦めろと言われるが、河村は緒形は必ず自分のところに戻ってくると信じている。

だが、緒形は江戸にもどってきていたのだが、矢場女の沢淑子のところにいるのだ。

店の女宮本信子が教えてくれて、河村は沢と対決するが、緒形は「このすごい剣を手に入れたので、絶対に勝って親分になってやる!」という。

河村は、15両の金を貯めていて、これで大阪に行って暮らそうと言い、一度は緒形も同意する。

だが、緒形を親分の敵と狙う小林昭仁や土方弘らが追いかけてくる。

緒形は、この剣で勝つと戦うが、ポキッと折れてしまう。河村が、剣を傷つけていたのである。

惨殺された緒形の死体を抱き、河村は言う、

「これであんたは、私のものだ!」

ドラマ性が少々過剰だったが結構面白いドラマだった。

だが、この沢淑子が、このころからずっと加藤泰の愛人だったのだから、事は複雑に見える。

これは、加藤泰の本妻(森栄)に対する、沢淑子と同棲していることの、言い訳ではないかと思えたからだ。

この前に上映された、満映で加藤が最初に監督した『虱は怖い』 は、アニメーションも使っている記録映画で、後年の加藤の過剰なドラマ性が少ない作品だったが、気が付くと寝ていた。

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