『複雑な彼』

原作三島由紀夫、脚本長谷川公之、監督島耕二、主演田宮二郎、高鞠子。
今は、この主人公の田宮は「安部譲二がモデル」として有名な作品。

アメリカ行きの飛行機内で、高鞠子が一目ぼれしたパーサー田宮の過去が明かされる話。
サンフランシスコ在住の滝瑛子、元恋人のアメリカ人イーデス・ハンソン、カイロで知合ったインド人真理アンヌ、そして父佐野周二の海外出張に同行しての高のブラジル行き、とすべて国際的な恋物語となっている。島耕二は、特に才気のある演出ではなく、凡庸な娯楽映画。こういうのを見ると、増村の『からっ風野郎』がすごい作品だとよくわかる。
海外ロケがそれだけで映画が売物になった時代で、田宮はサンフランシスコとリオ・デ・ジャネイロ、高もリオに行っている。
田宮のかっこよさだけを見せるもので、確かにかっこよく、何をしてもサマになる。

最後、田宮の背に刺青を見た高は、「それでも愛して行きます」、と言うが別れて行く。田宮も、謎の紳士若山玄蔵が提唱するアジア解放部隊に行く。この辺は、三島には「盾の会」を示唆しているのか。

公開当時の1966年では、まだヤクザと素人は住む世界が違い、決して愛し合わないとされていたことを示す貴重な映画であった。

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コメント

  1. ほらさわ より:

    大映旧作映画
    はじめまして。
    きっかけは忘れましたが、旧作邦画のブログということで読ませていただいております。けっれども作品紹介を越え、いつも短い中に鋭いコメントが書きこまれ感嘆しつつ読ませていただいております。特に村上春樹=カマトト小説は、思わずひざを叩いてしまいました。ついでに申せば、私もY市の市民で、その意味でも勝手ながら親近感を抱いておりました。

    ところで、今回の「複雑な彼」ですが、私が少年時代を送った昭和40~50年代、今から振り返れば大映の映画がよくテレビで放映されていました。その中で、田宮二郎が背中の彫り物を最後に披露する映画の印象が30年を経て今も鮮やかなほど、子供心に刻まれていたのですが、映画のタイトルなど覚えてもおらず、胸の痞えとなって幾星霜。思いもがけずご教示いただくことになり、大変感謝しております。今後ともご健筆を振るわれるのを楽しみにしております。