『忍びの者・伊賀屋敷』

高校3年の夏、中間試験の終了後、なんとなく見て、「娯楽映画だが、この監督(森一生)は本当はすごい人なのでは」と思った作品。
事実、森は京都大学時代は左翼運動で捕まったこともある人。
森は、新興キネマに入り、1970年に倒産するまで、主に大映京都で娯楽時代劇を多数作った。
東宝での『決闘鍵屋の辻』の脚本は黒澤明であり、森の回想では黒澤は「あれを見て東宝でも時代劇が作れると確信し、『七人の侍』を作ったのだろう」と言っていた。

多分『薄桜記』が、最高作だろうが、同じ雷蔵主演の『ある殺し屋』『ある殺し屋の鍵』も大好きな作品である。

『伊賀屋敷』は、霧隠才蔵の子、才助(共に市川雷蔵)が父を殺した松平伊豆守(山形勲)に復讐するのと、由井小雪(鈴木瑞穂)の乱が筋になっている。
由井が実は知恵伊豆のスパイだったというあたりが、この1960年代中頃の雰囲気をよくあらわしている。当時、60安保反対運動の敗北後、左翼陣営はきわめて混迷していたが、その感じがよく出ている。

真田幸村の子、幸姫が八千草薫で、忍者としても育てられて忍者姿で男風になるが、これがセクシーで、これで八千草のファンになった作品である。

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