『夜の片鱗』

ラピュタの桑野みゆき特集。モーニング・ショーなので、横浜を8時半に出る。1964年中村登監督作品。
電機会社の女工・桑野は、バイトのバーで知り合った平幹二郎と恋仲になるが、彼は女を食い物にするヤクザだった。桑野は、彼の言うままに街で客を引く娼婦になってしまう。

平のヤクザというのも珍しいが、その兄貴分の菅原文太はともかく、非情な組長が木村功というのが大変意外である。
チンピラに「東京の田舎っぺ」で有名になる前の、東京ぼん太が普通の役者で出ている。
売春の客に武内亨、桑野の同僚で岩本多代、タイトルに逗子とんぼの名があったが、どこに出たか分からなかった。

真面目なサラリーマン客の園井啓介が桑野に求婚し、一緒に北海道に行こうと言うがついて行かず、アパートに戻ってしまう。
だが、桑野は衝動的に平を包丁で刺し殺してしまう。

平と桑野のほとんど二人だけの芝居で、しかも平は最初の凶暴な男から、出入りで急所を蹴られて不能になり、女性的なヒモになるという、相当に演技力を要する役なので、平になったのだろう。

実は、この映画は、大学1年のときに見ているのだが、ほとんど記憶になく、また意味もさっぱり分からなかった。
多分、なぜ桑野がヤクザと分かれないのか、理解できなかったのだろう。
セックス・シーンはないが、全体として極めて強烈な反社会性の映画である。

なかなか面白い作品だが、どこかいまいちなのは監督の中村登は本来真面目な方で、渋谷実や豊田四郎のように、皮肉で冷笑的な視点がないせ性だろう。
音楽(日暮雅信)がいまいちだった。

桑野みゆきはスタイルがとても良い。藤原紀香にも負けない。
当時22歳で、普通の女工から娼婦まで多様な女性を演じるが、とても上手い。
同じ年に、彼女は豊田四郎の映画『甘い汗』では、京マチ子の娘で高校生を演じているのだから、たいしたものである。

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コメント

  1. 桑野みゆき
    桑野みゆきは
    声もいいですね~~
    「青春残酷物語」で大ファンになりました。
    「赤ひげ」の
    小田原風鈴がいっぱい鳴る中での
    シーンも心に残っています。

    情感があるというのか、せつなくなるような演技をされる方ですね。