今日も、渋谷に行き、武智鉄二の問題作品を見た。
1968年に大映で公開された『浮世絵残酷物語』は、作品のできはともかく、一番武智鉄二の思想を反映した映画だと思った。
話は、江戸中期の浮世絵師宮川長春をめぐる実話に基づいているようで、残酷趣味や裸はもちろあるが、
「大衆芸術が一番正しく美しく、嘘や上流の形だけの芸術は無意味」と主張している点で、武智鉄二の考えがよく出ている。
芸術派の桂離宮ではなく、日光東照宮を日本最高の美術とするところが、俗悪派の武智らしい。
この映画の原作は、羽黒童介となっているが、言うまでもなく上野の羽黒洞の木村東介のことだろう。
日光東照宮の修復を命じられた宮川(小山源基)は、持ち前の彩色技術で見事に完成し、老中堀田(宇佐美淳也)からは褒められるが、それをねたむ狩野派の首領小林重四郎からは、報酬も貰えず、かえって一味に暴行されて死んでしまう。
それに怒った宮川の子と弟子は、狩野の屋敷に行き、彼らを殺してしまう。
最後に残った宮川派の高弟は、三宅島に島流しにして、堀田は、「修復費用も出さずに済み、すべて上手く言った」と一人ほくそ笑む。
だが、武智は言う。
「権力は滅びても、芸術は滅びない」と。
武智鉄二の自信が言わせる台詞である。
シネマ・ヴェーラ渋谷