『透明人間』『ガス人間第一号』等の東宝特撮映画は、戦争中の軍の秘密研究を受託していたマッド・サイエンティストが変な薬を発明し、それを悪用する話である。
戦時中、円谷英二を中心に東宝映画は、日本軍ときわめて密接に協力し、様々な研究や事業をやっていた。
後に、新東宝撮影所となる第二撮影所には、特殊研究の部署が置かれ、そこで軍の委託で空中撮影の他、大砲の操作法のマニュアル映画(要はアニメで操作法を教える)等を作っていた。
そこには、円谷の他、戦後テレビのアニメ番組で活躍される、数年前に亡くなられた「うしおそうじ」らもいた。
軍の委託事業だったので、ふんだんに金が出た。
こうした戦時中の研究は、戦後東宝の特撮映画の大きな財産となった。
戦時下の円谷は、サイエンティストではないが、軍に協力した技術者だったことは間違いない。
だから、戦後円谷は「戦争協力」で追及されることを恐れ、余り公的には活動しなかった。
『ゴジラ』等の特撮映画で華々しく活躍するのは、占領軍による統治が終わった後のことなのである。
大庭秀雄監督の名作『君の名は』は、大船撮影所作品だが、冒頭の「東京大空襲」のシーンは、大変迫力のある立派なものだが、その特撮は円谷英二のものである。