「ぐらもくらぶ『映画』祭り」

保利透さんが主宰する「ぐらもくらぶ春祭り」がいつもの江戸東京博物館ホールで行われた。今回は、映画がテーマで、最初は岡田崇さんがコレクションした16ミリフィルムの上映。

アメリカのテレビで放映された日本についての1962年のフィルムの「トウキョウ・オープン・シティ」

オリンピック直前の東京についてのルポだが、やはりエキゾチックな視点からのもの。武道として説明されている格闘技は、リングでヘルメットと防具で行われているもので、テコンドーの感じであり、この辺は日本と韓国が一緒になっているようだ。

ナイトクラブのショーが紹介されるが、赤坂の「ミカド」で、大人数の男女のダンサー、ストリップティーズで、「こんなに大規模なショーだったのか」と驚く。

銀座にあったACBでのロカビリーのショーでは若い男女がみなツイストを踊っているが、結構様になっている。

さらに、1930年代に製作され、40年代に再編集されて戦地慰問に使われた、バズビー・バークレーのミュージカル映画。

多数のダンサーをマスゲーム風、幾何学的に使って万華鏡のような映像を見せるもので、その仕掛けの大規模さはいつ見ても凄い。

多分、テレビでも昔、ワーナー映画の歴史『我々が映画を作った』として放映されたものと同じだと思うが、本当に素晴らしい。

音響が最高で、16ミリフィルムでもきちんと録音されていたことがわかる。

次は、佐藤利明さんの解説で「ザッツ・ニツポン・エンタティメント」

エノケン・ロッパでのバズビー・バークレーに影響を受けたバーレスク的フィルムから、ベティ稲田、中川三郎、永田キングとミス・エロ子、エンタツ・アチャコ、あきれたボーイズの変遷。さらに戦前にベビー・タッパーがいたことは初めて知った。

そして戦後の笠置シズ子からクレージーキャッツまで。

クレージーが西河克己監督、和田浩治主演の『竜巻小僧』に出ていたとは知らなかった。

上映されたほとんどの映画が、秘蔵の初公開なので、佐藤さんからも、ご内密とのことなので、題名は書けないが、いずれの時期には何とか公開してほしいと思う。

これを見て改めてわかるのは、戦前の日本は、明治天皇が下された「教育勅語」の下で、美しい国・日本を追及していた時代ではなく、完璧にアメリカ的な文化に強く憧れていた都市文化の国だったことである。

また、敗戦と占領によって日本的なものが喪失させられたのではなく、すでに昭和初期には、すでにアメリカの「腐敗した」文化、芸術が都市の大衆には十分に浸透していたことの証拠も映像で明らかにされた。

最後は、活動弁士の片岡一郎と坂本頼光の「夢の競演」だった。

まず、保利さんの司会による活動弁士についての解説、紹介で、全盛期の昭和初期には全国で7,000人いたそうだが、現在は10人とのこと。これが多いのか少ないのかは意見があろうが、私は結構いるものだなと思った。

お話で非常に興味深かったのは、「我々はコレクターとは違い、採算の取れないフィルム等は買えない」とのことで、金に糸目を付けず入札する人もあるコレクターとは違うとのことであるが、それでも結構オークションでフィルムやチラシ等を買っているそうだ。

上映された作品では伊丹万作の『国士無双』がやはり最高で、片岡千恵蔵と高瀬実乗の演技が非常に面白かった。勿論、テレビでは見ているが、大画面で見ると彼らの演技の上手さがよくわかる。実は、これは1986年に保坂延彦監督、中井貴一とフランキー堺の競演で作られているが、まったく面白くない凡作だった。伊丹万作の他、片岡千恵蔵、高瀬実乗、さらに最後にインチキな仙人として出てくる伴淳三郎らの上手さがよく分かる。

また、近年片岡さんが発掘された『ペギーのお手柄』と、坂本さんが作られ水木しげる原作の『テレビくん』も上映された。ピアノも上屋安由美と大変に結構だった。

フィルムセンターでもサイレント映画の上映があるが、予算の関係だろうが弁士や音楽はなく鼾の洪水になるが、弁士と音楽が付かないと上映の意味はないと私は思う。

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