『危険な英雄』

脚本須川栄三、監督鈴木英夫、主演は石原慎太郎。
三流新聞の若手記者の慎太郎が誘拐事件を利用し、次々に話題を作り特ダネ記事で成功して行くが、最後児童が殺され、一転非難を浴び、地方に左遷される。

慎太郎の演技は、堂々として大変上手く、長台詞もきちんとこなしている。鈴木監督に相当絞られたのだろう。
ただ、弟の石原裕次郎のような、人柄の良さや可愛さはなく、秀才の傲慢さだけが目に付く。
「・・・ですな」と今も彼が良く使う皮肉な言い方をここでも多用する。
裕次郎の大ヒット作『嵐を呼ぶ男』の数ヶ月前に公開されたが、それほどは当たらなかったようだ。
この後、『若い獣』を監督した後、彼は映画への意欲を失ったのか、政治に転進して行く。もともと東宝の助監督試験に合格していた彼は、映画作りが大好きだった。

次々と話題を仕掛け成功していく記者慎太郎を、「危険な英雄」と言った脚本の須川栄三らの見方は正しかった。
その後の、慎太郎の生き方そのものだからだ。
だが、「残念にも」映画とは異なり、左遷はされず、常に話題作りに努め、今では東京都知事におられるのは、誠にご同慶に耐えない。

だが彼は、私には本当は危険ではないように思える。
何故なら、彼のいつもの「危険な発言」は、この映画のように本質的に話題作りであるからだ。彼は、負ける戦いはしない極めて冷静な保守主義者である。
マスコミに話題を提供して生きているという点では、石原慎太郎は、レベルは著しく違うが、叶姉妹と大して変わらないのである。
下北沢シネマ・アートン

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