1929年の島津保次郎監督作品、もちろんサイレント。
島津は、松竹蒲田の大監督で、松竹、そして引き抜かれて行った東宝で彼の影響を受けなかったのは、黒澤明くらいだろう。
堀川弘通の話だと、島津は東宝がに気に入っていて、
「君、東宝はいいねえ」とご機嫌だったそうだ。
彼が松竹から東宝に移籍したのは、本妻の他に愛人がいて、そのお手当をひねり出すために東宝の高給で移籍したのだそうだ。
彼の日常的な話の身辺雑話をつないで映画にする方法は、現在のテレビのホームドラマにまで続いている作劇法である。
東京の場末の町で、金持ちの家の犬が二子を産み、一匹が捨てられて、少年が拾い、自分たちのものにして競争させている。
撮影場所は、蒲田周辺だと思うが、戦後すぐも、こんな閑散とした町だった。
そこに令嬢が現れて、「私の犬で、執事が捨てた物だ」という。
少年は犬を返すが、最後みなで育てれば良いではないかとなる。
子役で、高尾光子や小桜葉子(加山雄三の母で、上原謙の妻)が出ていた。
松竹、城戸四郎のイデオロギーは、何度も書いているようにフェビアンニズムで、資本家と労働者階級は和解すべきだという考えなので、ここでも両者は和解し、明日は天気になると希望をもって生きることが暗示されて終わり。
実際は、昭和時代は、明るい希望ではなく、戦争の時代になってしまうのだが。
フィルムセンター
コメント
犬の競争をした場所が 字幕で矢口の原っぱと出てきましたので、大田区の矢口付近でロケしたものと思われます。