前に、松竹の『有楽町0番地』を見ていて、役者として勅使河原宏が出ていることを以下のように書いたが、彼が出た理由が分かった。
『有楽町0番地』
1958年、有楽町の外堀が埋め立てられ、フードセンターと高速道路が出来た時、ここでは宮城区と中心区とされているが、それを千代田、中央のどちらの区に編入するかを題材とした作品。
ほとんど笑えない喜劇だが、二つの注目されることがある。
一つは、監督が『涙』『伊豆の踊り子』等の真面目な作品の多い川津義郎であること。さらに、脚本と共に、詩人役として、後に『砂の女』などの作品を監督する勅使河原宏が出て、下手だが、それなりの芝居をしていることだった。
勅使河原が、役者として映画に出ているとは知らなかった。
それは、大著『小林正樹』(岩波書店)にあり、映画『人間の条件1・2部』のときのことで、主人公の瞳麗子の恋人は、当初南原宏冶だったが、小坂銅山でのロケで南原が戻ってこられなくなった。仕方なく小林トシ子と結婚していた勅使河原に急遽したと言うのだ。
そして、この時の俳優経験が後の彼の劇映画製作への意欲とつながったと言うのだ。
そのくらい『人間の条件』の撮影は大変だったということだろう。