この前に『女体は哀しく』の乙羽信子がきれいだったと書いたが、実は『獄門島』と『殺人狂時代』が見たくて、その間で仕方なく見たのだ。
『獄門島』は言うまでもなく、名探偵金田一耕介(片岡千恵蔵)第1作目で、大ヒットした。因みに「ごくもんとう」ではなく、「ごくもんじま」と発音。現存するのは総集編だけで、前・後編になっていたものの編集版なので、筋が良く分からず、また例の俳句の見立ての件がない。
映画が終わったのち、コーヒー店で休んでいると、金田一耕介ものファンの若い子が話していたが、やはり筋が不明とのこと。それに、主役の一人の和尚役・斉藤達雄を全く知らなかったが、無理もあるまい。だが、白黒の迫力には感心していたようだ。これを見ると、改めて市川昆版が良く出来ているかがわかる。
『殺人狂時代』も、途中まで筋が分かりにくいが、とても面白く実験精神に富んだ作品である。昔は邦画大手でもこんなものも作っていたのだ、という証拠。
中で、犯人に人質となった団令子の姿を8ミリで送ってくる件は、鈴木清順の『殺しの烙印』で、真理アンヌが火で焼かれる映像を宍戸錠が見るところに影響している。どちらの会社にも、作家・都築道夫氏が深くからんでいたので、同様な発想が交流したのであろう。
今回の特集は、死んだ映画人の追悼で、『獄門島』は監督の松田定次。『女体は哀しく』は美術の植田寛、照明の下村一夫だが、宝塚映画の人らしく知らない。『殺人狂時代』は、天本英世と団令子、さらに東宝の脇役だった山本廉。
追悼されるのは、2002年1月の河原崎しづ江から今年11月になくなった小林千登勢まで約70人。
1月は19日からで『マタンゴ』と『ヒポクラテスたち』。今井正の『純愛物語』(1・19)、岩下志麻の父・野々村潔が主演した東映教育映画『少年合唱隊』(1・21)、団令子の『素晴らしい悪女』(1・23)、水木洋子脚本で渋谷実監督の傑作『もず』(2・12)等を見るつもり。
コメント
はじめまして
2ちゃんからきました。以下、気づいた点です。
>8ミリで送ってくる件は、鈴木清順の『殺しの烙
>印』で、真理アンヌが火で焼かれる映像を宍戸錠が>見るところに影響している。どちらの会社にも、作>家・都築道夫氏が深くからんでいたので、
「殺人狂時代」と「殺しの烙印」はともに67年公開ですが、前者は前年に完成後、しばらくオクラ入りしていました(たぶん半年くらい)。従って直接の影響関係はないと思います。人口調節審議会のPR映画は原作にあります。
一方、壁に投影されるフィルムというモチーフは、「殺しの烙印」の脚本家チームの一人、大和屋竺が好んだものでほかの映画でもよく出てくるので、「殺しの烙印」では彼の発想かもしれません。
それでは。
大和屋の他の映画とは
『殺人狂時代』は67年2月で、『殺しの烙印』の公開は同年6月なので影響した可能性はあると思います。
大和屋脚本で、壁に投影されるフィルムというのは他にはどんな作品があったでしょうか。
すぐには思い出せないのですが。
どうぞよろしく。
Unknown
どうもです。大和屋脚本で梅沢薫作品「引き裂かれたブルーフィルム」がそうだと思います。あとピンクかロマンポルノでこの手の趣向があった記憶があります。
僕は両作の間に影響関係はあまりなく、たまたま異形のアクション映画が同時期にできてしまったと思っています。その結果、清順は解雇され、喜八もオクラ入り。どちらもやりすぎた、ということでしょう。