特に感想もないが、大晦日のテレビはどれもいまいちだったね。今更テレビに何かを期待する方が間違っているのだが。「紅白」もほとんど見なかったのは、一昨年と同じ。密かにひいきにしている中島美嘉が出る前後を録画して寝る。「格闘技」も大同小異という感じで、パンチ力に欠けたのではないか。
夜中風呂に入った後にビデオを見ると、中島は葉加世太郎などという気持ち悪いクラシックくずれと共演している。もうひいきはやめることにする。
昨日は裕次郎の『太陽への脱出』(監督舛田利雄)、岩下志麻の『古都』(監督中村登)のDVDを借りて見た。
『太陽への脱出』は、日本の旧財閥系の会社(どこか三菱重工を思わせますね)が密かに武器を東南アジアに売却しているという話で、珍しく裕次郎の相手役は、俳優座の岩崎加根子。当時、裕次郎の相手役は芦川いづみだったが、役が裕次郎の家のメイドで現地妻ということで岩崎になったのだろう。
タイのバンコクでロケしているが、皆バンコックと発音している。
最後は、武器製造工場に一人乗り込んだ裕次郎が、工場の手先のギャング(柳瀬志郎ら)に銃殺される、というもので裕次郎が殺された最初の作品だそうだ。現地のナイトクラブなど、松山宗のセットがすごい。また、裕次郎の同僚・梅野泰靖が銀座で殺されるシーンは、実際の隠し撮りと、当時常備されていた「日活銀座」のオープン・セットでの撮影を混ぜているようだが、ほとんど切れ目が分からない。
『古都』は、以前山口百恵版は見ていたが、これは見ていなかった。
監督が中村登なのできわめて正統的に作っているが、音楽は武満徹。岩下の父親(宮口精二)が帯地画のヒントにパウル・クレーの絵が出てくるなど、相当に前衛性である。川端のセンスというより、当時の松竹大船のセンスだろう。
特典映像には、京都の撮影現場に川端が来たことが証言されている。相当なロリ・コンだった川端は、吉永小百合の『伊豆の踊子』の現場にもわざわざ山を登ってきて、西河克己らは大変迷惑だったそうだ。吉永は、頭のいい子だから、ニコニコと応じていたそうだが。
同じく特典の『雪国』の予告編(大庭秀雄監督、岩下、加賀まり子、木村功ら)の冒頭に、『秋津温泉』の音楽が使われている。
当時、予告編は社内のセカンドかサード助監督が作ったので、音楽は使い回しやレコードが多かった。日活の西村昭五郎監督のデビュー作『競輪上人行上記』の自転車がバンクを走るときに使用された伊部晴美の印象的なギター独奏は、その後多くの日活映画の予告編に使用されたものだ。
今は予告編は、広告代理店が作るケースが多いようだ。
この『古都』の自分と同じ人間がもう一人いる(ここでは双子だが)という意識は、入眠幻覚の一つの「自己像幻覚」であろう。ゲーテや芥川龍之介も自己像幻覚を記録しているはずだ。