『ふたり』

この大林宣彦監督の映画を見ることにしたのは、脚本家桂千穂の『多重脚本家・桂千穂』を読んだからだ。
大林映画は決して嫌いではなく、最初の商業映画『ハウス』も面白いと思ったし、富田靖子が素晴しかった『さびしんぼう』も好きだった。
だが、なんとも少女の世界を描いているので、少々気持ち悪いと言うか、おじさんとしては少々恥ずかしいのである。
亡くなった二人の女性劇作家岸田理生や如月小春と同様の生理的な世界であり、男の私としてはいい加減にしてほしい。

桂千穂は長谷部安春監督の「暴行シリーズ」の他、日活ロマン・ポルノで多数のシナリオを書いたシナリオ・ライターであり、暴行シリーズが変態映画であるように、これも「変態映画」である。
少女たちの自意識過剰な、自己憐憫の世界である。

二人とは、妹石田ひかりと事故で死んだ姉の中島朋子で、中島の幽霊が出てきて石田と対話するのがドラマ。
だが、良く考えると、これは石田ひかり自身の幻影のようにも見える。
所謂「自己像幻覚」である。
自分にもう一人の自己が見えるというもので、デ・ジャブの感覚に近い。
川端康成の『古都』の双子のもう一人もそうした話だった。

また、これは、羽仁進の傑作『午前中の時間割』や、アメリカ映画の名作『キャリー』にも良く似ている。
石田ひかりが高校生はともかく中学生というのは少々無理があるが、全体にとても楽しい作品で、見ている間私はとても幸福だった。
中江有里など美少女が沢山出てくる。ミュージカルの場面でヒロインを演じるのは、今やおばさんと化した島崎和歌子。
久石譲の音楽も良い。

だが、この映画の世界は実は苦い現実を含んでいる。
姉の死、両親(富司純子と岸部一徳)の不和、友人の父親(ベンガル)の死、母親の心の病など。

青春はかくも複雑、微妙な世界で、二度と戻ることのできない時間なのか。
これは、大林宣彦というおじさんからの若者へのメッッセージである。

全体として見れば、カメラ(写真家の長野重一)が少し動きすぎだが、途中からは気にならなくなった。
そのうち新尾道三部作も見ることにする。

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コメント

  1. k より:

    Unknown
    8ミリの頃から、ゆえなく

    大林さんを嫌ってきました

    ふたり

    たのしめます。いい感じなのに

    違和感を忘れたら、恥知らずになってしまいそう

    クインシーさん。エンディングの歌、やだったろうな

  2. 石田ひかり

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  3. 多重映画脚本家 桂千穂

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