熊井啓死去

映画監督の熊井啓がなくなられた。76歳。
熊井と言うと、「社会派」という形容詞が付くが、日活の助監督時代には、赤木圭一郎の『霧笛が俺を呼んでいる』(監督山崎徳次郎)、蔵原惟善監督、石原裕次郎・浅丘ルリ子の名作『銀座の恋の物語』、あるいは坂本九・吉永小百合の舛田利雄監督の青春映画『ひとりぼっちの二人だが』など、娯楽映画の脚本を書いており、結構柔軟でエンターテイメント的なところもある監督である。
熊井というと、顔をしかめる人が多いが、私はそれほどひどいとは思わない。だが、どこかとても勘違いしているように思えた。

例えば、遠藤周作原作で世界の三船敏郎の遺作『深い河』
主人公が秋吉久美子と奥田英二で、二人とも愛に苦しむ話だ。
だが、奥田が人間不信で女から逃亡し、フランスの修道院、さらにはインドの寺院で修業するなど、誰が信じられるか。
女の尻を追いかけて、世界の果てまで行くなら理解できるが。
秋吉も、こうした奥田への若き日の過ちに何時までも悩み、奥田に懺悔に行くのである。本当かね。ミスキャストと言うしかなかった。

熊井監督の遺作は黒澤明の脚本を映画化した『海は見ていた』だが、少しも面白くない作品だった。
黒澤明の晩年のつまらない脚本を有難がって制作するのも、これまた信じがたかった。
赤木圭一郎の『霧笛が俺を呼んでいる』は、キャロル・リードの『第三の男』の完璧なリメークである。レンタルであるので、是非見て欲しい。

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コメント

  1. 熊井啓

    熊井啓熊井 啓(くまい けい、1930年6月1日 – )は、映画監督。現代を代表する社会派監督である。長野県南安曇郡豊科町(現安曇野市)に、地主の父、元教師の母の息子として生まれる。旧制松本中学(現長野県松本深志高等学校)、松本高等学校 (旧制)|…

  2. ブラボー より:

    深い河
    おっしゃるとおり、

    私も配役を見て、はてな?と思ったひとりです。