戦前にアメリカに渡り、日本の中国侵略批判等の反戦運動を行った石垣綾子と画家栄太郎夫妻がモデル。友人の演出家として佐野碩も出てくる。
作斉藤憐、演出佐藤信。
地人会なので、1993年の初演以来木村光一演出で行われてきたそうだが、佐藤演出は初めて。
近年の斉藤・佐藤作品の中では、最も良い作品だろう。
1980年代後半以降の斉藤・佐藤作品は、崩壊した社会主義の言い訳ばかりで、良くなかったが、ここではロシア社会主義の誤謬もきちんと、明快に描かれていた。
主人公夫婦は、竹下景子と夏八木勲だが、ピクチャー・ブライドとしてアメリカに来てカルフォルニアで農民として生きてきた寺田路恵が最高だった。
石垣夫妻は、戦前アグネス・スメドレーとも親交があり、ゾルゲ事件の関係者でもあり、戦後のアメリカの「赤狩り」の中でいられなくなり、日本に戻ってくる。
石垣綾子さんは、長く生きて、「進歩的文化人」の一人として活躍される。
ラスト・シーンの綾子の20世紀への願いの台詞には感動した。
紀伊国屋サザン・シアター