1952年の大映の正月映画。正月らしく年末の酉の市で始まり、正月で終わる。
川端康成の『浅草紅団』は、戦前の浅草を舞台にしたモダンな話だが、これは戦後の浅草を描く風俗映画。監督は久松静児、脚本は成沢昌茂と適役である。
主演は女剣劇の座長の京マチ子とレビュー劇団の乙羽信子、この二人が実はは腹違いの姉妹だったという因縁話が絡むが、メインは、乙羽と根上淳の恋。
根上は、乙羽を狙う地回りの親分に敵にされていて、1年前に暴行されて浅草を去っていた。
それが年末に戻ってきたところで始まり、浅草の風景がタイトルバック。浅草寺は、戦後急造した木造のもので極めて小さなお堂。仲見世もバラックの狭隘な作り。
話は、いろいろあるが勿論最後は乙羽と根上が結ばれる。
異様な顔つきの親分が誰れかと思うと、元は松竹の二枚目の岡譲二だった。
田中絹代がギャングの情婦を演じる小津安二郎監督の問題作1933年の『非常線の女』のギャングである。彼は、松竹の後、戦後は大映や東映で悪役を演じていたのだ。
京、乙羽、根上の他、杉狂児、河村粂吉、潮万太郎などの名脇役をうまく使っているのはさすが久松監督。
衛星劇場