『殺し屋ジョー』

最近見た劇団俳小の劇で一番面白かった。理由は簡単で、筋がはっきりとあったからだ。

鈴木忠志は、「演劇は役者を見せるもので、物語やテーマで感動させるものではない」と言っているが、私は違うと思う。吉本隆明は、「劇的言語帯は、物語言語帯の上に成立する」と書いており、これの方が正しいと思う。

テキサスのダラスに住む白人貧民家庭の話で、トランプ大統領が見たら、「フェイク!」というだろうが、出てくる人間たちは全員トランプに投票しただろう。

麻薬売人のクリスは、実母に多額の保険金が掛けられていて、受取人は妹ドティであることを知り、母親殺害を企て、悪徳刑事クーパーに殺害を依頼する。

家に来たクーパーは、代金は前払というが、ドティとやらせてくれば後払いでも良いという。

ドティは、やや知的障害で高校を出た後は、ずっと家に引きこもっていて「処女」だという。

ある晩に、クリスと父親、さらに現在の継母らは部屋を出て、クーパーとドティを二人にする。

そこで食べるのが、カセ・ロールなるもので、パイのようなものらしい。この二人のシーンは、テネシー・ウイリアムズの『ガラスの動物園』のような感じがある。

もちろん、クーパーはドティとセックスし、彼女は、クーパーに惚れ、婚約してしまう。

そして、方法は不明だが、無事母親は死に、保険会社に保険金を受け取りに行くと、受取人はドティから別の男に変更されていた。

全員が落胆し、ドティを巡って、一緒に他の町に行こうとする兄クリスと、婚約者クーパーの大乱闘になる。ここは狭いステージ上でのアクションだが、よくやっていた。

最後、ドティがピストルの引金を引き、クリスと父親は撃たれ、他の者もストップ・モーションになってエンド。

劇団代表の斎藤真さんによれば、作者のトレイシー・レッツは、結末についてなにも提示せず、観客の判断に任せているとのこと。オフ・ブロードウエイ発の劇だったが、ブロードウエイはもちろん、各国で上映されてきたとのこと。

演出シライ・ケイタ(温泉ドラゴン)

池袋シアターグリーン BOX in BOX

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