江夏の21球

NHK・BSの「お宝TV」を見ていたら、『江夏の21球』をやっていた。
昭和54年の広島対近鉄の日本シリーズ第7戦での江夏の投球については、忘れられない思い出がある。
何故なら、その日、私は鎌倉でお見合いをしていたからである。

職場の先輩の紹介で、北鎌倉の料理屋で会い、二人で鎌倉に行き、鶴岡八幡宮を歩いて話をした。
相手は、横浜の医者の娘で、県立高校で歴史の先生をしている真面目な子だった。
だが、私はそんなことはどうでも良かった。
日本シリーズの行方が気がかりでしょうがなかったのだ。
6戦まで戦った後の、3勝3敗の7戦目だった。

どこだか全く憶えていないが、入った喫茶店でラジオの中継が流れていて、鈴木啓示が投げていて、近鉄が負けていたのを聞いただけだった。
3時過ぎに見合いを終えて、彼女を鎌倉駅に送り、テレビを探した。
電気屋の店頭にテレビがあり、皆が見ていた。

丁度ノー・アウト満塁になったところだったと思う。
そこで佐々木恭介が三振し、石渡がスクイズ失敗して三塁ランナーがアウトになり、一気にツーアウト2,3塁。
そして、石渡も佐々木と同様、江夏のカーブに三振した。
本当に見事としか言いようのない江夏の投球だった。
元々私は阪神ファンで、江夏ファンだったが、このときは今まで一度も日本シリーズで優勝していない西本監督の近鉄を応援していたので、大変がっかりした。
その見合いの相手とは、そのときだけで、二度と会う気がしなかった。
真面目すぎて上手く行きそうもないので、丁重にお断りしたのである。
だが、このとき日本シリーズが行なわれていなければ、もう少し真剣に考えたかもしれない、と今は思う。
そのときは、まさしく見合いどころではなかったのだ。
全く馬鹿な話だが、若かったと言うべきだろう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする