大相撲、千秋楽の白鳳と朝青龍の一番を見ていて、昭和33年9月東京を狩野川台風が襲った時、私の家でも母と子供で家中の箪笥を二階に上げてしまったことを思い出した。
最後は、白鳳が投げで勝ったが、朝青龍が何度か白鳳を吊り上げようとした。
自分よりも体重も身長も上の相手を吊り上げるなど、なかなかできることではない。簡単に「集中力」というが、それは容易なことではない。
それができるのは、一種の「火事場の馬鹿力」的な力の入れ方を朝青龍は、どこかで会得したのだろう。あるいは、モンゴル相撲には、そうした秘伝・秘法があるのかもしれない。
狩野川台風の豪雨で床下を氾濫した川の水が流れ、すぐに床上まで来そうになった。
職場の小学校を守り家にいない父の代わりに、母と子供たちだけで中に着物が入っている重い箪笥を全部二階に一気に持ち上げてしまった。
翌日、水が引いた後、箪笥を下ろす時は、到底下ろせず、中身を出してやっと下ろした。
まさに「火事場の馬鹿力」だった。
朝青龍の力は多分そうしたものに違いない。
だから、追い詰めれれるほど彼は力を出すのだと思う。
彼を破るのは容易ではなく、その意味で白鳳はすごい。