昭和32年、石原裕次郎の大ヒット映画の昭和41年のリメーク作品。
監督は、舛田利雄、脚本池上金男、裕次郎作品の脚本・監督の井上梅次は原作になっている。この時期彼は、日本を離れて香港で活躍し、これも『青春鼓王』としてリメークしている。
主演は渡哲也、というより渡の売り出しのために名作をリメイクしたものである。
裕次郎の恋人兼マネージャー役の北原三枝は、芦川いづみ(前作では裕次郎の弟でクラシックの作曲家青山恭二の恋人役)に代わっている。
二人の間を嫉妬する悪役は、前はジャズ批評家の金子信夫だったが、ここではテレビ局芸能部長の内田稔。
渡の弟は、藤竜也で、その女友達は太田雅子(梶芽衣子)。
藤は作曲家ではなく、カー・レーサーになっているなど、時代に合わせた設定になっている。
前作から、留置所の鉄格子をドラムのように叩くのや、渡と悪役山田真二(前は笈田敏夫)とのドラム合戦など、見せ場を巧みに取り入れてあり、舛田らしいメリハリの付いた出来になっているが、どこかはじけない。
やはり、役者にどこか若さがない気がする。
第一に渡は、本質的に暗く、裕次郎のような明るさがないことが致命傷だったのだろう。だが、この暗さ、ニヒルさは、直後の『人斬り五郎』シリーズとして結実する。
日活も昭和29年の製作再開以後、10年を過ぎ、全体に裕次郎主演の『嵐を呼ぶ男』のような若さがなくなっている。
また、渡、藤や梶など、その直後にニュー・アクションで活躍する連中は、どこか古い物語を演じている違和感ある。
最後、前作にはなかった兄弟の父親で宇野重吉が出てくる。
貧乏絵描きで、母親の山岡久乃に苦労をかけるが、最後は和解を示唆する。
演奏は日野兄弟と猪俣猛と本格的で、日本でモダン・ジャズが一番盛り上がっていた時代である。
バンドのメンバーとして、杉良太郎も見えるが、台詞なし。
この頃彼は、藤竜也より遥か格下の役者だった。
NHKBS2