川崎の臨海部、工場地帯の小学校、岩手から転校してきて喘息に悩む少女・良子が主人公。
相手役の少年新太は、弁当屋牟田逓三の息子のサッカー小僧で、勉強は駄目だが、気の良いガキ大将。
貧困と病気から、クラスで差別され仲間はずれにされている良子に新太は正義感から次第に同情し、二人を介してクラス全員が仲良くなる。
だが、良子は病気を心配した叔父下川辰平の岩手に引っ越して行く。
そして、最後そこで突然死んだという知らせが来る。
クラスの担任は、今やバラエティーの常連になった地井武男。
新太の姉は、少女時代の原田美枝子、母親はどこかで見た女優だと思っていたが、最後のタイトルで元文学座の谷口香とわかる。
弁当屋の使用人が松田優作、良子の父は高原駿郎、母は石井富子と新劇系が多い。
さらに地井の同僚の先生に高山千草、病院の医者に五條博と日活の古い脇役も出ている。
脚本は勝目貴久で、筋は一般の児童映画の域を出ないが、監督の沢田幸弘は、アクション映画のように細かいカットでつないでいて、見ていて不自然さはない。
最後、良子が岩手の叔父の家に戻るため、川崎駅から旅立つところ、少年らが見送りに来るところなどは、なかなか感動的だった。
1974年の制作で、日活はロマンポルノ全盛時代だったが、一方で組合や日本共産党とも蜜月時代で、このような「良心的」な映画も作っていた。
これは有名な作品だが、学校等の巡回上映だったらしく一般に公開されたことは少ない。
川崎駅といえば、大島渚のデビュー作『愛と希望の町』の少年が靴磨きをやっていたのも川崎駅前広場だが、この1970年代には、京浜急行はすでに高架になっていて、大きな踏み切りはない。
駅ビルや日航ホテルは昔のもので、現在のものよりは規模の小さなものである。
テーマは、川崎の工場地帯の大気汚染で、確かにこの頃が公害も一番ひどかった。「公害の町・川崎」だった。
今の阿部孝夫市長は、「音楽の町、芸術の町」川崎を標榜している。
本気でしょうか。
川崎市民ミュージアム。
もう1本は駿河湾のヘドロ公害を題材とした1971年の『ゴジラ対へドラ』だが、主演は山内明、柴俊夫、麻里圭子と誠に地味で、「ゴジラ・シリーズ」でも最もさえない作品の一つだろう。半分くらいは寝ていた。