ジャズ評論家久保田二郎のエッセイに、立教大学時代の長嶋茂雄が後輩部員に「黒澤明の『のよしけん』はいい映画だから見ろ!」と山手線の中で言っていたとの記述があった。
CSの「黒沢明リメイク特集」で見たが、かなりお粗末だった。
拳銃を盗まれた刑事渡哲也が、先輩の芦田伸介と町を歩いて犯人を捜すのは同じ。
横浜市の鶴見、川崎潮田の沖縄出身者が多く居住している地域をかなり丹念にロケしているので、映像的には珍しいものがある。
だが、シナリオがひどい。
最後、川崎駅からバスで新宿西口に行き、さらに晴海までバスで行くのがるが、絶対にありえないコースである。2時間以内に着くだろうか。
犯人は沖縄から来た少年たちだが、詳細は不明で、犯行の経緯もよく分からない。
多分、元のシナリオはもっと長かったのだろう、それを公開時にカットしたのに違いない。筋の展開の意味がほとんど理解できないのだ。
この程度のシナリオを黒澤明、菊島隆三が了解したのは不思議だが、当時黒澤プロダクションは金に困っていて、ともかく著作権料が欲しかったのだろうと推測するしかない。