『花の宴』

1967年、松竹大船で作られた、作曲家滝廉太郎をモデルとした作品である。
勿論、冒頭で滝廉太郎をモデルにしているが、創作とされている。
だが、調べると滝は、23歳で死んでいて、音楽学校に入ったときは、15歳で、『花』等の有名な曲を作ったときは、10代だったのだ。
だが、10代の少年では、恋の悲劇も、生活の貧困も表現できないので、主人公の中山仁は、大分の田舎から出てた苦学生、恋人の香山美子は、明治政府の官僚清水将夫の一人娘になっている。
この中山と香山の悲恋、ドイツに留学して結核になってしまった中山の悲劇になっている。

中で興味深かったのが、清水将夫の次官就任披露宴の余興に招かれた中山は、ピアノでショパンを弾く。
とパーティーの連中は全く聞かず、雑談に興じる。
そのとき、香山がピアノに代わり、滝の曲『花』を弾く。
するとみなが合唱し始める。

香山は中山に教える。
「高尚な曲よりも、誰でも歌える曲の方が尊いのではないか」と。
これは、1960年代の中頃、大島渚以下のヌーベルバーグが去った後、大船撮影所を支えていた市村泰一や番匠義昭ら、娯楽派の監督のプライドではないかと思う。
誰も理解しない高尚な映画よりも、俺たちが作っている娯楽作品の方が意義があるのだと。

映画の展開に連れて、『花』『荒城の月』等の曲が流される。
香山美子は、吉永小百合そっくりで、美人だったのだが。
衛星劇場

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする