ラピュタの井上梅次特集、前からサスペンスの名作として有名だったので、見に行く。
原作はハロルド・Q・マスルなので、非常にバタ臭い雰囲気になっている。
旅行から戻った弁護士の田宮二郎が自室入ると、下着姿の女浜田ゆう子がいて、田宮を誘おうとするが、キザな男の田宮は断り、酒を飲んで意識を失った女をタクシーに乗せて自分はベッドに寝る。
と刑事が来て、女は薬物で死に、タクシーの運転手も証言したので、田宮が殺人犯と疑われる。
この浜田ゆう子の殺人から、大金持ちの伊東光一と若妻田中三穂子の交通事故死に絡む遺産相続の争いになり、筋はかなり混みいっていて、二転三転する。
だが、最後はいつもの通り美女が犯人。
その意味では、『金田一耕助シリーズ』と同じで、田宮二郎も最後まで多くの殺人を阻止できない無能な探偵ぶりを果たして、最後に犯人を指す。
大変に面白いのが、ギャングの安部徹や絵描きの卵の江波杏子らで、原作がアメリカなので、すべての人間に強い個性が与えられている。
また、ギャングの手下たちもそれぞれが裏切り合っているのが面白い。
ただ、問題は映画の進行が観客の理解のスピードよりも少し早いことだと思う。
これでは、普通の観客には理解できず、ヒットできないと思う。
昔、東京映画で川島雄三が池内淳子主演で『花影』を作り、ラッシュを見たとき、
編集者に対し川島は、「先を行き過ぎているね」と言ったそうだ。
そこで、すぐに編集者が少し遅く編集し直したところ、川島は「これで良い」と納得したそうだ。
この『わたしを深く埋めて』は、編集のタイミングが少し早く、われわれの理解がついて行けないところがあるように私は思えた。
伊部晴美の音楽が良いのはさすがである。
阿佐ヶ谷ラピュタ