九州で、障害児の施設を作られた山本三郎さんの実話に基づく映画、監督は清水宏で、主演は宇野重吉と花井蘭子の夫妻、先生は香川京子である。
1955年、まだ大蔵時代となる前の、良心的文芸映画の頃の新東宝作品であり、助監督は意外にも石井輝男。
宇野・花井夫妻の長男で小児麻痺な子は河原崎健三、その弟で死んでしまうのは、岩下亮。
岩下志麻の弟で、大きくなってから数本映画に出たが、どちらも前進座の関係者である。
子役で、葉山葉子も出ている。
小学校で、不具(当時のことなので、皆が「びっこ」と言っている)、いじめられていた河原崎健三について、宇野重吉は、妻の理解も得て、私財とつぎ込み、障害児の施設「しいのみ学園」を作る。
法的に言えば、こうした法定外の施設に公共の補助はなく、独力で作られたのだろうが、誠にすごい。
いろいろあるが、様々な困難を乗り越えて、学園は子供達と共に育っていく。
清水宏は、西河克己の表現では、
「世の中にこれほどえばる人がいるものか」と思うような人だったらしいが、子供や弱いものを描くのが上手い監督である。
要は、きわめて幼児性の強い人間だったのだろう。
戦後の清水の作品の中では、ヒットした作品のようだ。
ただし、斎藤一郎のハモンドオルガンの音楽が始終流れていて、過剰であり、非常にうるさい。
この映画のモデルの山本さんは、100歳を越えてもまだお元気でご健在とのことである。
衛星劇場
コメント
Unknown
劇中で死んだのは弟役の岩下亮ではなく、岡山から捨て子同然に預けに来た夫妻の子供(テツオ)ですよ。
清水宏については新人俳優イジメで有名だったそうで、それに怒った丹波哲郎がスタッフが居る面前で「オッサン」呼ばわりしました。
石井輝男の師匠が清水宏だったので、師匠が皆の面前で恥をかかされたので、新東宝時代は丹波哲郎とは口もきかず、当然石井輝男作品には出演していません。
和解したのは彼が東映に移ってからです。
「大俳優 丹波哲郎」から
ご指摘ありがとうございます
岩下亮が河原崎の弟だったのは正しいのですね。。
彼は、成人してからも少し映画に出ていましたが、大成せずにやめましたね。
彼は、あまり押しの強くない人間のように見え、岩下志麻とは対照的ですね。