『遥かなる走路』

ホンダの次は、トヨタである。

1980年に松竹がシネセルらの協力で作った、トヨタ自動車のPR映画、社史のような映画であるが、佐藤純也の監督作品にしてはできは良いほうだろう。

明治時代、自動織機を発明した豊田佐吉(田村高広)は、息子喜一郎は東大工学部にやり、経営面は商社から米倉斉加年を娘中野良子の婿に迎える。

技術と経営をそれぞれにやらせるためで、大正天皇から藍綬褒章を授与されて幸福に死ぬ。

市川染五郎(現松本幸四郎)の豊田喜一郎は、豊田家の家業の織機から自動車企業への転換を図り、苦心惨憺の末に成功する。

昭和初期の日本は、産業のすべてが遅れて、乗用車を作るのは容易ではなかったが、技術的問題をひとつづつ解決して乗用車の試作品を完成させる。

だが、戦時体制から自動車製造は、許可事業になることを知り、トラック生産に乗り出す。

作品としてみれば、この不良品で故障ばかりで、修理に苦労するトラック生産の件が一番面白い。

役者は、佐吉の最初の妻が岩崎加根子、二度目は司葉子、染五郎の妻は白都真理、技術者に三橋達也の他、地井武男や山谷初男と新劇系が多い。

この映画の企画が、民芸映画社、日活さらにはATGでも活躍された大塚和なので、その人脈だろう。

音楽が、ゴダイゴで、映画の生真面目さには少々合わない軽薄な感じがした。

チャンネルNECO

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