『釣りバカ日誌』を見るために初めて映画館に

1970年代以降、日本映画を堕落させたのは、『トラック野郎』と『釣りバカ日誌』である。
この二つとも、渥美清の『男はつらいよ』の真似で、それも極めて下手くそな。
私は、『釣りバカ』は、山田洋次が、「『男はつらいよ』の価値を上げるために、わざとひどいものを作って併映しているのでは」と一時は思ったくらいだ。
『トラック野郎』が、短期間で打ち切りになったことは大変喜ばしかったが、『釣りバカ』は、20作も作られたのには、驚く他はない。
自慢じゃないが、『釣りバカ』を見たくて見に行ったことはない。だが、以前、区役所の民生委員や保護司、老人クラブ等の担当をやっていた。その研修旅行に付いて行くと、初日は、バスガイドも張り切って説明している。だが、翌日になると疲れてきて、「ビデオでも見ますか」と来る。
せめて『男はつらいよ』にしてもらいたいが、なぜか高齢者のリクエストで『釣りバカ』になり、愚劣な作品を見せられる。

喜劇は、身体の動きと反応の早さが命である。つまり喜劇は基本的にはアクション映画なのだ。
渥美清は、間の上手さと体の動きの鋭さが、笑いの元である。
だが、三国連太郎も西田敏行も、体の動きの全く駄目な、非アクション・スターである。いつも動きが緩慢でだらだらしている。そこにまともな笑いがあるわけがない。『トラック野郎』の菅原文太には、まだアクション・スターの動きがあった。

今回、『釣りバカ』が20作目で終わりとなると聞いたので、お祝いに見に行くことにする。伊勢佐木町のニューテアトル。
話は、三国連太郎の旧友の娘松坂慶子の娘吹石一恵が、獣医で北海道に行っていて、母親の松坂に内緒で、農場主の息子塚本高史と同棲していたことを知って驚く。
そして、許し、和解するまでの、松竹人情映画である。
どこにも笑うべきギャグがないのに、観客は大いに笑っている。
「このおじさん、おばさんたちは、何を言っても笑うのではないか」と思うほどに爆笑している。以前、小林信彦は、「日本人は笑わない」と書いたが、むしろ逆で、笑いすぎである。
「一体、どこが面白いの?」と思うばかりだった。

唯一笑えたのが、最後に三国連太郎が脳梗塞で倒れて意識を失い、三途の川に行くところ。
正塚のばあさんや亡者たちがでて来て、「ラ・クカラーチャ」や「シェリトリンド」に合わせてダンスするところだけは、作者たちの知恵を感じた。
このには、アイディア料として、200円は払って良い。
その他、全部いくらあわせても500円は越えない価値の映画というべき。
ともかく、この愚劣さを日本国中にばら撒いてきたシリーズが終了したのは、誠に喜ばしいことだ。

「こついは春から縁起がいいわぇ」

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コメント

  1. 闘いうどん より:

    Unknown
    あけましておめでとうございます。
    私も日帰りバス旅行の帰りに釣りバカのビデオを見たことがありました。
    西田敏行はそもそも新劇俳優なのに風貌から喜劇役者のように見られてしまってますよね。
    本年もよろしくお願いいたします。

  2. さすらい日乗 より:

    こちらこそ
    今年も、どうぞよろしく。
    『釣りバカ・20』の中で、披露していますが、西田敏行は明らかに森繁久弥の後釜を狙っている。
    レベルが違いすぎるのに。野球で言えば、長嶋茂雄と中畑清くらいの差がある。