『白鷺』

またしても泉鏡花原作の明治時代の話。
柳橋の料亭の娘入江たか子は、日本画家高田稔に白鷺と言われる美女だったが、高田は死に、その高弟黒川弥太郎と入江は、恋仲だが、時代の変化の中で次第に悲劇へと行く。

柳橋も、明治になって新興の新橋などに次第に取って代わられ、衰退したことを踏まえているのだろう。
入江に成り上がりの無礼者丸山定夫が、手を伸ばしてきて、芸者の朋輩清川玉枝を使って、入江をものにしようとする。
高田の亡妻千葉早智子の計らいによって、入江の借金も清算されることが決まった雷雨の夜、入江は丸山の毒牙から逃れるために自殺してしまう。
音楽は早坂文雄、監督は島津保次郎だが、オリジナル版を弟子の豊田四郎が再編集したとのこと。
丸山定夫とその妻杉村春子が出てくるが、やはり非常に上手い。
監督の島津保次郎は、日常的な自然な劇が多いが、こういうメロドラマも作っていたのだ。
彼が、松竹からPCLに移籍したのは、愛人へのお手当金だったそうで、彼はそうした問題にも詳しかったらしく、男女関係の微妙なところがよく描かれている。
横浜市中央図書館

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