1953年にミス・ニッポンで、ミス・ユニバース世界大会で3位に入賞して話題になった伊東絹子が主演とした1954年の市川昆監督作品。
原作が菊田一夫なので、かなりメロドラマ仕立てになっているが、それを市川昆のモダンなセンスが冷笑しているような不思議な映画になっている。
話は、雪深い北海道の田舎から始まり、シベリアに抑留されていた許婚が6年ぶりに帰って来るというが、その相手の日高澄子は、戦前に妹の伊東絹子とできていたことが許せず、男も家の前で死んでしまう。
東京に出た日高を追って伊東も東京に行く。東京での唯一の知り合いは、絵を書きに来た画家の上原謙だけだが、その途中で大阪レイヨン社員の池部良と知り合い、二人は恋に落ちる。
会社の社長の令嬢は有馬稲子で、戦後の女性で何事にも積極的的な有馬と、おしとやかで消極的な伊東の恋愛行動が対比されている。有馬も池部が好きだが、有馬のことは元華族で東京支店長の二本柳寛が恋している。
また、東京で詐欺師の加東大介に引っかかっている日高と伊東もなんどもすれ違うが、一度も会わない。
本当は、池部の下宿に日高は来ているのだが。
大阪に皆が移る部分があり、ここは結構リアリテイがあるが、これは市川昆が関西人(伊勢市出身)だからだと思う。
そう考えると『細雪』『炎上』『ぼんち』『悪魔の手毬歌』と彼の作品で、よいものはみな関西が舞台である。
大阪で伊東はファッションモデルとして成功し、ついには東京でのミス・ニッポンコンテストに優勝することになる。ショーの司会がトニー・谷で、インチキ映画が大いに笑える。会場は、もちろん阪急系の東京会館。
そこから、アメリカでの世界大会の様子になり、それが場末の映画館のニュースとして上映されているのを見ている零落した日高澄江の姿になる。
伊東絹子のセリフも、ほとんどが受け身なので、そうおかしくはない。
最後のショーでの洋服姿、そして水着姿も美しい、と言ってもビキニではなく優雅なワンピースだが。
彼女は身長164センチだったそうで、「八頭身美人」は彼女から生まれた言葉である。
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