『今日は踊って』

戦後の東宝ストライキの結果、新東宝ができ、その1作目の劇映画であり、スト反対派の中心の青柳信雄の製作、監督渡辺邦男、主演長谷川一夫である。

東宝ストの反対派の中心は、渡辺邦男だとされてきたが、本当は長谷川一夫だった。

ただ、彼は役者であったことと、映画『稚児の剣法』で自分を売り出してくれた、尊敬する監督衣笠貞之助が組合支持派だったので、表には立てず、渡辺や青柳が中心のように見られてきたのであるが、それは間違いなのだ。

そのことは、最初に組合を脱退した伊藤雅一の『霧と砦 東宝大争議の記録』に書かれていることだが、誰も気づいていないようだ。

長谷川は、戦前は絵を勉強していたが、軍隊で覚えた車の運転技術を生かして運送会社で働いている。彼はまじめだが、同僚の岸井明は、ダンスホールに通い詰めて、ダンサーの山根寿子に惚れている。

岸井の歌が聴けるのは楽しい。

彼女には、運送会社の社長の江川宇礼雄も惚れていて、岸井と江川の恋のさや当てが筋だが、実は山根は、戦前に長谷川と恋仲だったという話。

長谷川は、心やさしい男で、町で浮浪児の少女を拾ってきて育てているのは、チャップリンの『キッド』のいただきだろう。

勿論、最後は長谷川と山根が無事再会して結ばれる。

なんとも安易な作りだが、これを見て長谷川一夫が、意外にも西欧的な二枚目顔であることを発見して驚いた。

結構、「バタ臭い」顔なのだ。

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