二つのタブー

かつて日本映画界には、二つのタブーがあると言われた。

一つは、「回想場面」であり、もう一つは「オムニバス・ドラマ」だった。

どちらも見るものが混乱し、筋がよくわからなくなるからというものだった。

今井正監督も、オムニバス・ドラマの『にごりえ』を作り、地方での上映会があり、ある観客から、

「幸福な女性が、なぜ最後は殺されてしまうのですか?」と聞かれて驚いたそうだ。

あの映画は、一人の女性の話だと見た観客がいたのである。

「オムニバス映画を作る会社はつぶれるので、注意した方がいい」と白坂依志夫は、新藤兼人から言われたそうだ。

確かに、新藤も書いた映画『愛すればこそ』はオムニバス映画で、これの後、独立映画は倒産してしまった。

また、映画『女経』を作った大映も1971年に倒産した。

だが、東宝には『四つの恋の物語』や『くちずけ』もあるが、きちんと日本一の映画会社として無事存続されている。

回想場面は、脚本家橋本忍が多用するもので、多くの秀作を作っているので、今は回想がタブーというのもなくなっているのだと思う。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする