1960年に、関西各地の被差別部落を取材した亀井文夫のドキュメンタリー。
神田小川町のネオネオ坐で見る。
部落解放同盟の全面的な協力というより、その資金で作られた映画だろう。
冒頭、ソ連のスプートニク打ち上げ成功のテレビを見に集まっている部落の子供の多さ。少子高齢化の日本も、つい最近までは人口過剰を憂慮する国だったのだ。
実は、高校生の頃にテレビで放映されたのを見たのだが、記憶になかった。
当時の部落の実態は、想像できないくらいにすごい。今のフィリピン等の途上国以下だろう。
どぶ川をさらって金属かすを取り、溶かして半田棒にする。猫かウサギの皮の加工、勿論、グローブ等の皮革産業も。
亀井文夫がすごいのは、解放同盟のスポンサー映画でありながら、大阪の運輸会社のストライキ破りへの動員や江戸時代の長吏としての、民衆を弾圧する集団だった問題点もきちんと描いているところ。
さらに、意外にもユーモアがある。
本来は戦争賛美の映画『上海』を反戦映画(上映禁止)にしてしまったように、この監督は確かにただものではない。
絶対的貧困という言葉を思い出した。
彼らの仕事の一つに失業対策事業があった。その紹介所に集まる人間の多さ。
失業対策事業は、彼らのような失業者に職を与え、道路工事等の公共事業を行ったもので、地方自治体が窓口になっていたが、原資は国だろう。
大体1970年代に終了した。
その後、彼らは自治体の現業労働者として直接・間接に雇用されるようになる。
最近、関西で問題となっている、現業労働者の不就労や暴力行為等も問題は、この制度によって雇用された者が起こしたものだろう。時代は変わるものだ。
最後、「責善教育」なる言葉が語られる。私は聞いたことがなく、家に戻り調べると当時提唱されていた「同和教育」の名称だそうだ。
この記録映画上映会は、日比谷図書館から借りたフィルムによるものだそうで、著作権法の関係で無料になっていた。こういう方法もあるのか、と大変参考になった。