ゼフィレリの恋人去って世界のニナガワを生む

BSがフランコ・ゼフィレリ監督の『永遠のマリア・カラス』を放映していた。
ゼフィレリは、日本では映画監督とみなされているが、本当は劇やオペラの演出家で、1974年に東宝が市川染五郎(現松本幸四郎)と中野良子で『ロメオとジュリエット』を日生劇場でやったとき、最初に声をかけたのはフランコ・ゼフィレリだった。
だが、彼は東宝の申し出にこう言った。
「日本で演出するのは良い。ただ、僕の恋人の演出助手が演出ノートを持って逃げたので、今の私に完全な演出はできない」と。
恋人とは勿論、男の子である。

そこで、次に声をかけたのが、東宝幹部が誰も知らなかった蜷川幸雄である。
東宝制作部の中根公夫プロデューサーが、当時京都で『水戸黄門』のテレビ撮影にいた蜷川幸雄に会いに行くと、即全部のシーンの演出法をとうとうと語ってくれたのだそうだ。
そこで、蜷川に『ロメオとジュリエット』の演出をさせることにした。
だからもし、ゼフィレリの恋人の少年がノートを盗まなかったら、世界の蜷川は生まれていなかっただろう。

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