『太陽のない街』

昔、横浜のシネマジャックで見て、「暗い映画だな」という記憶しかなかったので、本当はどうなのか見に行く。
1954年の山本薩夫監督作品で、山本は「社会派」とよく言われるが、改めて見て、むしろアクション映画監督だと思えた。

原作は、徳永直のプロレタリア文学で、東京文京区小石川にあった印刷所が集中していた地域、太陽のない街で起こった労働争議を描く。
近くの茗荷谷で、20代の終わりにあった小劇場・イーストエンドで芝居をやっていたことがあり、暇なときに周囲を歩くと、丘に囲まれた谷底の地域だったことを思い出す。遠くの丘には、鳩山御殿もあった。

印刷所で30人の首切りが起こり、撤回を求めてストライキに入り、組合側の様々な活動が描かれる。会社側の手下との格闘などアクションシーンも要所要所で挿入されていて、見ていて飽きない。
主人公は、日高澄江で、父親は薄田研二、妹は桂通子だが、桂は他で見たことがないがどうしたのだろうか。桂の恋人は、原保美。
会社側の暴力団で、花沢徳衛が出ているのは笑える。この人は戦前から共産党の活動家で有名だったのだから。
群像劇なので、多くの俳優が出ていて、日高と結ばれるのは、二本柳寛だが、エキストラも大変に多く、映画監督の山田洋次や音楽評論家の湯川れい子さんも出ていたのだそうだが、もちろん分からない。
最後は、工場で火事が起き、その容疑者として幹部が逮捕され、全員が首切られて終わるが、日高は組合い旗を掲げて町に出ていくところで終わる。
これを見ていると、これは徳永が描いた共同印刷争議のことではなく、山本や製作の伊藤武郎らが体験した東宝争議のことのように思えてくる。
これは、東宝争議の解決金として組合が会社から取得した1500万円を基にできた新星映画社の最後の作品となる。
美術とエキストラに金を使いすぎたためだそうだが、久保一雄の長屋のセットは確かに大きく、本物の「トンネル長屋」よりはるかに立派。
不思議なのは、桂通子が警察の拷問で死んでしまうが、卒塔婆には大正15年12月と書かれていることで、実際の争議は昭和になってから起きたので、時代をずらしてあるのだろうか。飯田信夫の音楽が少々うるさい。
阿佐ヶ谷ラピュタ

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