『ヘアピン・サーカス』

あらゆるものに好奇心を持つ私だが、車にだけは若いときから興味がない。
だが、ほんの一時期、わざわざ免許を取り車を持ったことがある。
1990年代の初めの頃である。

結婚したとき、妻の家は、1950年代から自家用車を持っていた家だったので、彼女は車を持ちたかったらしいが、そう不満は言わなかった。
彼女の兄弟たちが車を持っていたので、必要なときは、兄弟の手を借りれば用は済んだからである。
だが、二人目の子供は、小学校に上がるころから、小児喘息になってしまった。
ご承知のように、喘息は部屋の温度が急変する夜中によく起きるもので、次女も夜中にたびたび発作を起こすようになった。
当時はバブル期で、夜中にタクシーを呼んでも来ないので、結局妻の兄に夜中に起きてもらい病院に送ってもらうことが何度かあった。
そこで、すでに40をすぎていたが、教習所に行き、免許を取得した。
今までの私の体験の中で、最も不愉快な思い出の一つ。
中古車を買って1年半所有したが、すぐに処分した。
次女の喘息が5年生の時に治ったからだ。
小児喘息は、気管の気道が狭いために起こるもので、大人になり、気道が太くなると発作も起きなくなるからだそうだ。

さて、この西村潔監督の作品は「多分ひどいだろう」と思い長い間見てこなかった。
結果は、見ていなくて正解だったというもの。
私の隣にいた男の人は、ほとんど寝られていた。

この低予算映画の見所は二つあり、一つは見崎清志という現役レース・ドライバーを使ったこと、マカオでのレースや日本での高速道路走行のテクニックが見られることだろう。
勿論、私にはどちらも興味はないが。

主人公の見崎は素人で、台詞に無理があり、監督はなるべく見崎を喋らなくてもよいように演出している。
相手役は、江夏夕子で、見崎の妻も戸田夕子、見崎の上司は睦五郎という地味な俳優ばかりなので、ドラマはどこにも出てこない。
菊池雅章の音楽、ジャズ歌手の笠井紀美子の出演など、監督のジャズ好きがよく出た作品だと思う。
かっこだけでは、映画が成り立たないという好例であろう。

西村潔は、石原慎太郎の大学時代の友人で、共に東宝の助監督試験を受け合格した仲。
デビュー作で『死ぬにはまだ早い』という傑作を作ったが、その後作品には恵まれず、最後は入水自殺してしまった。
死ぬにはまだ早かった。
ラピュタ阿佐ヶ谷

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