日本の演劇に一番必要なのは国際化である

新国立劇場で、『夏の夜の夢』を見たが、出来が良く、また意外にも場内の反応も良かった。
演出は、2年前と同じRSCのジョン・ケアード、主演は村井国夫と麻美れい、そして妖精パックはチョウソンハ。

新国立劇場ができて9年だが、ここの最大の問題は観客が沸かないことである。
それは、芝居のみではなく、オペラでも同じだった。
いくら、良い演技等をしても、少しも観客が反応せず、白けているのだ。

2年前の『夏の夜の夢』でも、村井国夫が「ちょい悪おやじ」風に決めても、全く反応がなかった。
だが、今度の『夏の夜の夢』では、意外にもかなり客席が沸いた。
それは、今回は思い切って現代風にしたことだろう。
そして、思うのは、今回の演出のジョン・ケアード、そしてパック役のチョウソンハと、外国人の活躍が大きいことである。

前から、日本の演劇界に一番欠けているのが、国際化だと私は言ってきた。
複製品によって容易に海外作品が日本に入ってくる映画、音楽、文学等とは異なり、演劇は海外のものが簡単に日本国内に流入することがない。
つまり、西欧から距離的に遠いことと、日本語という障壁によって日本の演劇は、海外作品との競争なしに今日まで来てしまったのだ。
そこが、日本の現代劇の最大の問題だと思う。
昨年の、フランス人演出家のピランデルロの『山の巨人たち』も良かったように、今後も新国立劇場が第一にすべきことは、外国人演出家等の招聘による「国際化」の促進だと私は思う。
また、昨年一番評判が良かったのも、チョンギシンと韓国の演出家が共同した劇『焼肉ドラゴン』だった。また、2005年の平田オリザ作『その河を越えて五月』が、意外にも良かったのは、韓国人演出家と俳優のお陰だった。
新国立劇場は、今後もこの方向で行って欲しい。なぜなら、こういう国際化のようなことは、民間ではなかなかやっていくことが大変なものだからである。

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