『真夜中の顔』

歌舞伎座が作る映画があった。時には、歌舞伎座映画という名称だったこともある。
松竹で公開されたが、実は歌舞伎座の名で製作された作品は、結構ある。
東宝の、東京映画や宝塚映画のようなもので、 五社協定の枠外で、自由にスタッフ、キャストを組んでマイナーな映画を作っていた。
そして、ここがユニークなのは、東宝争議で解雇されたメンバーなどを使って時代劇や現代劇を作っていたことである。
それが、松竹社長の大谷竹次郎氏の、左翼映画人への救済だったかどうかはよくわからない。
1958年に作られた、この作品も歌舞伎座である。

脚本は、新藤兼人、監督は宇野重吉で、役者は若原雅夫や三国連太郎、水戸光子、桂木洋子、中川弘子ら以外は、清水将雄、滝沢修、梅野泰靖、内藤武敏、芦田紳介、信欣三、下條正巳など劇団民藝の俳優。

銀座の水戸光子のバー、女給の桂木は男を待っているが来ないので、謎の連中宮阪将嘉、下條正巳、下元勉らから東京湾への船遊びに誘われて、中川弘子と一緒に出かける。
まだ、」銀座裏には運河があり、そこから船で出る。
そこに新聞記者で、桂木が待っていた三国連太郎が来る。
そして、東京湾で船から桂木が落ちて死んだことを中川と下條らが言って戻って来る。

三国は、恋人の死でもあり、下條らを追求するが、罪を逃れたい彼らは、ヤクザの梅野を呼び、梅野は、次々ともみ消し工作の手を打つ。
そこから、三国と梅野らの攻防になるが、次から次へと劇が展開して実に面白い。

前にも書いたが、新藤兼人は、監督としては好きになれないが、シナリオ・ライターとしては大変な腕である。

謎の右翼的な大物の滝沢修、桂木の夫で、いつものように異常な言動の信欣三の突然現れ方もびっくり。
最後、この謎の連中は、官僚と政商で、裏には汚職があることがわかる。
勿論、真実は暴かれず、梅野と若原雅夫も総てを闇に葬る裏の勢力によって殺され、桂木洋子の死は、酔いどれ医者小川虎之助の死亡診断書によってただの心臓マヒとされてしまう。

ここに描かれた、政官財が癒着し、真実は常に権力によって捻じ曲げられるという作者たちの考えには、到底賛同できないが、映画としては大変よくできた面白いものである。
衛星劇場

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする