『流れる星は生きている』

戦争の末期、現地で召集される夫の伊沢一郎と別れ満州から引き上げてきた妻三益愛子の3人の幼い子供を抱えた苦労を描く作品。

引き上げの列車の中で、泣く子に向かってうるさいと叱る植村謙二郎を「キチガイだからしかたない」と三益が言うと。

植村は、「召集を逃れるためにニセキチガイを装っていたのさ」とうそぶく。

大陸の大河を歩いて横切り、泥濘に足を取られながら、三益は子供たちを叱咤激励して無事本土につく。

だが、そこからが本当の苦労の始まりで、引揚者寮に入居したが、三益は製本所で働き、長男は靴磨きで小銭を稼ぐ。

同様に引き上げてきた若い女性は三条美紀で、この三益愛子・三条美紀コンビは、大映の「母物の」のコンビであり、これも母ものとして充分に泣ける。

監督は小石栄一で、表現は古臭いが、大映、東映で小石天皇と言われたほどの監督で、泣きのツボを心得た演出でもある。

撮影は、後に日活で大活躍する姫田真佐久、音楽は斎藤一郎。

戦後の荒廃した町で、植村謙二郎は巧妙に生きて、キャバレーを持ち、そこで歌う三條美紀やホステスとして働く羽鳥敏子らにまで手を出そうとしている。

最後、火事でキャバレーは燃えてしまう因果応報になり、品川駅に伊沢一郎が戻ってくるところで、エンドマーク。

作家藤原ていの満州からの引き上げの悲劇実話であり、その夫は言うまでもなく作家の新田次郎、次男は藤原正彦先生である。

横浜市図書館AVコーナー

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