『やぶにらみニッポン』

1963年、東京オリンピック開催に浮かれる東京を舞台にして日本と外国との係わりを描いた非常に珍しい作品。

                

製作の金子正且さんによれば、「鈴木監督に合わないものを押付けてしまった」と書いているが、最近、見た映画で一番面白かった。

監督はその鈴木英夫で、脚本は奥山長春。

この人は日活の助監督だったが語学の天才で、すぐに辞めて青島幸男の番組のテレビ等の構成を書いていたと思うが、今はアメリカにいるらしい。

週刊新潮に連載されていたヤン・デンマンという匿名の外国人が書いたとされていたエッセイ「青い目の日本の日記」を基にしたもの。

羽田空港に、二世の原子力科学者の町平博士(ジェリー・伊藤)がやってくる。

彼は日本人の父親とアメリカ人の母親との間の子で、父の墓参りに来たのだという。ここには、ジェリー・伊藤は、ダンサーだった伊藤道郎と米国人女性との間の子だったことも重ねられている。

そこに週刊誌記者の宝田明が現れ、記事の連載を依頼する代わりに、東京を案内する。

宝田の恋人は、白川由美だが、もう一つ二人は現在の関係(清い関係)から踏み出せない、ラブ・コメディーでもある。

そこに、京都弁を話す美人のムーザ・毛馬内が絡んでくる。

ムーザ・毛馬内は、モデルでテレビには多く出ていたが、映画は非常に珍しいと思う。彼女は、シャラポアを思わす可愛いルックスで人気があったが、早くに結婚して引退した。

もう一組、変な不良外人のE・H・エリックと奇妙な女性の若林映子が出てくる。

元がエッセイなので、劇的なドラマ性は薄いが、いろいろと皮肉な感想が出てきて飽きなかった。

そおの一つが、金に困ったエリックが、路上に絵を書き、若林が説明して日本人から金を恵んでもらうことで、つい最近までこの手の外人は日本によくいたものだ。

ムーザ・毛馬内の他、珍しいのが「文化人」の座談会で、寺内大吉ともう一人眼鏡を掛けた男がいて毒舌を吐く。誰かと思うと十返肇だった。この作品の後すぐに亡くなられているので、貴重な映像らしい。

最後、ナレーターだった小林桂樹の司会で3組の結婚式が行われるが、途中で地震が起きて停電になり、取替えが起きる。

冒頭の博士が原子力関係の人といい、ラストの地震と停電といい、3・11を予言したようにも思えた。

新文芸坐

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする