『香華』

木下恵介の名作だが、途中で見るのを止める。こういう女性の性(さが)とか、母と子の争い、といったテーマは嫌いなのだ。
数年前に死んだ劇作家岸田理生は、盛んにこのテーマを劇化したが、男の私としては、残念ながら「関係ないね」と言うしかなかった。

公開当時、映画は大ヒットしたが、舞台での山田五十鈴・香川京子に比べ、乙羽信子・岡田まり子ではミス・キャストだ、として評判は悪かった。
確かに母性ゼロの母親は、山田は適役でも乙羽には相応しくない。
松竹映画としては、主役は岡田なので、均衡から乙羽にしたのだろう。
乙羽はいい役者だが、むしろ母性的な女性なので、確かにこの役は相応しくない。

この母親のように、男から男へと渡り歩く女性は、今では掃いて捨てるほどいるが、まあ戦前では珍しいだろう。
美しいということは、すべてを許されるのか。不条理というべきか。

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