『あわれ彼女は娼婦』

前日、かなり飲んだので、なるべく寝ないように昼飯を軽くして見に行くが、半分は寝てしまった。

最近、映画や芝居を見に行って寝ることが多いが、その時は「向こうが悪い、私の関心を引き付けられない方がいけないのだ」と思うことにしている。

         

エリザベス朝後期の、ジョン・フォードの劇は、兄と妹の近親相姦で有名で、日本では1970年に文学座のアトリエ公演で、太地喜和子と小林勝也の共演で初公演されたものである。

昔、小林勝也さんに聞いたことがあるが、彼は太地喜和子と「徹底的にやろう!」と言ってまさに徹底的にやって当時としては大胆な性表現で評判になった。

ジョン・フォードは、エリザベス朝とはいっても後期で、シェークスピアの20年後で、時代は次第に暗い雰囲気になっていたのだ。

舞台は、当時のものの通例で、イタリアのパルマ、市民フローリオ(石田圭祐)の息子で真面目な男ジョバンニ(涌井健治)は、妹アナベラ(青井優)を愛してしまう。

そこから悲劇へと向かうが、同時にアナベラに求婚し、結婚式を挙げる貴族のソランゾ(伊礼彼方)は、偽医者の妻ヒポリットと姦通していて、彼女から復讐される。

この三角関係も結構重点が置かれているのだが、やはり劇の核心は、兄と姉の近親相姦であり、これは残念ながら十分に納得できるものではなかった。

青井も涌井も、いい役者だが所詮「ニン」がちがうと私には思えた。二人は、言ってみればどちらかと言えば、知的な清純派なのだ。

演出の栗山民也は、普通はそうな見えない人が悪に陥ることを描きたいと言っているが、やはり無理だったと思う。

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