『新平家物語』から脇役まで

デジタル・リマスター版がBSで放送された。
以前、市川雷蔵祭のとき、銀座の映画館で見たが、やはり色が渋い。
衣装の色が草木染め淡い色彩になっているが、当然だがすごい。
当時は、現在のような人工染料による鮮やかな染色はなかったのだから当たり前だが、今では時代劇にもひどく派手な色彩の衣装、美術が出てくる。

音楽は早坂文雄で、他の作品で聞いたメロディーが出てくるが、タイトル・バックの荘重な曲から実に格調高い。

この時代の映画を見て一番感心するのは、脇役が良いことで、ここでも平忠盛の大矢市次郎、義父石黒達也、商人の進藤英太郎、大矢の部下の菅井一郎、河野秋武など。
また、悪役の貴族に俳優座の千田是也、さらに十朱久雄、また、僧侶に沢村国太郎なども。
この映画は、中身に乏しいとされているが、結局主人公は忠盛の妻、清盛の母となる木暮実千代が演じた祇園女御ではあろう。
白拍子から天皇の愛人、平忠盛に妻となるが、最後はまた白拍子として、野原で公家と戯れている。溝口が大好きな変転する女性である。

平安末期の騒乱期を題材としているが、この混乱は、明らかに戦後日本の社会を反映していると思う。
依田義賢、成沢昌茂、辻久一の三人の脚本だが、大変よく出来ている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする