もう少しましな作品だと思っていたが、実につまらないものだった。
いつものことだが、崔洋一の映画にはテンポがなく、切れが非常に悪い。
沖縄、ベトナム戦争、ロック、男と女と書けばそれで全てとなる。
主演の中川安奈は、舞台で見たこともあり、ルックスとスタイルは最高だが、育ちの良いお嬢様であり、ロック・ボーカリストに一番遠い存在である。
ミス・キャストの典型例で、なぜ彼女をキャスティングしたのか、この映画における監督崔洋一の第一の間違いである。
いくら沖縄の日本人と米軍兵士との間の男女の愛憎劇を展開しても、中川と相手役の石橋凌が大根で、二人共意思が見えないのでドラマにならない。
それにしても、セットのほとんどがライブ・ハウスの中だけで、大変に金のかかっていない映画である。
言うまでもなく、永田雅一社長の大映が倒産した後、徳間書店の金と組合の組織力で映画を作っていた時代なので予算が不足していたのだろう。
製作の山本洋は、山本薩夫の息子でり、組合運動の後、復活した大映でプロデューサーとして活躍した。
日活で、組合幹部から社長になり、ロマンポルノと金融操作で日活を延命させた根本悌二によく似ている。
本日も崔洋一監督が来ていて、この特集期間中に来ていた方の言葉では、「崔監督は連日来ていて偉い」とのことだった。
だが、よく考えれば映画監督というのは失業者であり、日常のほとんどは暇なのだから、来るのも当然といえば当然なのだが。
フィルムセンター